インターネットが誕生した瞬間から、コンピューターウイルスは存在するといわれています。「コンピューター」という情報端末がプログラムで制御されるものであり、そのプログラムがインターネット回線でやり取りができてしまうことから、インターネットが誕生した瞬間から「ウイルス」に準ずるものは開発が可能でした。どこからどこまでが「ウイルス」なのか、という定義は当時はもちろんありませんでしたが、その情報端末の利用者が意図しない挙動を示すプログラムは、やがて「コンピューターウイルス」と総称されるようになっていきました。
インターネットが誕生したばかりの頃は、コンピュータやそれを繋ぐ回線自体が限られた人のものでしたから、「ジョーク」目的のものも沢山あったことでしょう。限られた技術者、プログラマーだけが理解できるカタチで、ネットワーク上に放たれたのかもしれません。やがてコンピュータが「パソコン」として各家庭、各個人、各企業に浸透し始めると、同時にインターネットも爆発的な広がりを持つようになりました。最初は誰の家にでもある「電話線」を介した通信が、回線自体の増強と端末本体の機能向上により飛躍的に利便性を増し、大規模データをやり取りするようになりました。その利用目的も多岐に渡るようになり、「インターネット」がインフラと化したのです。
そうなると、もはや「限られた人」だけのインターネット、コンピューターではなくなります。開かれた情報網はさまざまな技術や知識を簡単に共有することができ、コンピュータのスキルを持つ人材も急速に増えていきました。「ホームページ」として情報をネットワーク上に公開することが用意になり、大小様々なウェブサイトが、個人や企業を問わず立ちあげられました。知りたいことは何でも即座に調べることができ、遠く離れた誰か、そして会ったこともない、顔も知らないような誰かと通信上で情報交換をしたり、意見を交わすことも可能になりました。
やがて情報端末は小型化し、有線上で強化されてきたネットワークは電波上でも構築されるようになり、利用者はさらにさまざまな形態でインターネットを利用することができるようになったのです。情報の配信自体も企業や大規模な団体でなくても可能になり、個人レベルでも容易になりました。インターネット上ではただのデータの羅列に過ぎず、それを「ブラウザ」というソフトやその他のプログラムを介して認識しているだけなのに、人はその情報に左右されるようになったり、テレビやラジオといったメディアから離れるようなことも目立つようになりました。
そのような状況では誰かが「悪意」を持てば、匿名性が保たれるインターネット上で不正な行為を働くことは容易に想像できます。ウイルスを制作して不特定多数の人に驚異を与えたり、個人情報を抜き出して悪用したり、いくらでも「悪意」を発揮する方法はあるのです。それが「便利なもの」として発達したインフラの負の側面でもあります。確実に生活は便利なものになったものの、反面それに便乗した不正行為も可能というわけです。コンピュータウイルスはそのようなことを考えれば、存在するべくして存在しています。インターネットという完全に公共のネットワークだからこそ、誰もが自らセキュリティを意識しなければいけないのです。
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